• Kenichi makino

回顧録 memoir / 残された過去の思い出

忘れ去られた「時」の尋ね物達(時は元に戻れないと 誰が決めたのでしょうか




10年ほど前の春頃 ある女性の方から事務所に片付け依頼の電話がありました、

急いでいるとのことで 数日後 指示をされた現場(築40年ほどの二階家)に向かいました。依頼人の方は30歳後半と思われる清楚な感じの方でした。

お話の状況は 「母親はいま病気で入院をしていて、お医者さんはもう数週間だと言っておりました。母には治療費や父親の多額の借金もあり 支払いに困窮しています。ここの家には今後住む者がいないので解体をして処分をしたいと思っているのです」とのことでした。

わたしは依頼人の方とご自宅の中に入り残された家財の査定と見積を始めました。

玄関から リビング 洋間へと確認作業を行っていきました、洋間にはお母さんが救急車で運ばれる間際まで居たと思われるベットと布団類 飲み残された薬、 一口しか食べられなかったと思われる菓子パンなどが、つい数時間前までここに居たのではないかと思わせ感じさせる雰囲気の跡が寝室には残っておりました。

一通り 見積を終え、後日 ご連絡をすることにいたしました。

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数日後 見積内容をお電話でお伝えいたしました、ご依頼人の女性の方は「それでお願いいたしますと・・」

作業に入る前に【作業承諾書】が必要な為、作業の前々日に再度お会いをして、承諾書にサインをしていただきました。

サインが終わると その女性の方は・・

「私と 母親とは13年ほど会っていなかったんです」と、

「死んだ父親が居なくなった後、 この家で母親と二人で暮らしていたのですが、

なにが原因だったか そこがわからないのですが、ちょっとした言葉の掛け違いで喧嘩になったのだと思います」女性の方は承諾書の方に目をやりうつむきながら見つめ、 「まぁ いろいろあったんです 父の残したお金のことなんかも・・それで13年間 会わなかったんです。そうしたら 病院から母親がもう長くないと連絡が突然・・」

「気持ちは他人ですが・・ 病院や母親のお世話をしていただいた介護施設の方には そうした事情は関係ないことなので、 病院には行きたくなかったのですが そのままにしておくわけにもいかないので しかたなく 母親の居る病室に行きました」と、

女性の方は ボールペンを強く握りしめながら

「私は病室のベットの上で なにも喋ることができなくなった状態の母親を病室の隅に立ちながら、じっと見つめていました」

「母は癌の末期で病院から入院をするように再三 前から言われていたようなのですが、この家で死ぬと言い張り 頑なに 回りの説得にも応じなかったみたいなんです、でも最後は痛みに耐えきれず 自ら救急車を・・」 女性の方は私に少し微笑みながら

「すみません お忙しいのに つまらないお話をして」と

私は(お話をしていただいてありがとうございます)と 申し上げました、

(作業をするにも事情を知って行うのと 知らないのとでは違いますから)と ご説明をいたしました。

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数日後 ご自宅の作業を行いました、

見積の際には気が付かなかったのですが、

寝室のベットの脇や足元には なぜか農薬の瓶が数本 未使用のままの状態で置いてありました。 (まさか 自殺でもしようかと思っていたのかと・・)

二階の和室には あの女性の方が幼かった頃に遊んだと思われる玩具や人形がありました。

古い衣装箱〈茶箱〉の中には お母さんにあてて書いた【母の日】の手紙や家族と写した

小学校の頃の運動会の写真、お父さんやお母さんへの感謝の【手作り肩たたき券】なども入っておりました。

本当の事情はわかりませんが・・

いまは このようにして13年間も会うことすらできないまま 病室で無言のまま対面したお二人・・。

しかし この部屋の衣装箱の中には【時間の止まった物達】が存在していた。

私には 到底無理な推察かもしれませんが、

たしかに このご自宅にはお母さんが元気だった頃の思い出があり 亡くなった旦那さんと過ごした「時」の記憶が沢山 残されていたのだと思います。ご自宅の中にもそうした「物」が多く残されておりました。 (淋しかったのだろうか)(最後はどちらが正しいとか 間違っているとかなどは とてもはかり知ることなどはできなかった)

お母さんには この家と この家の中の「過去の思い出」の「記憶の物達」が短い命と悟った後の生きる糧のすべてだったのかもしれません。

女性の方には 作業承諾書にサインを頂いた時 別れ際に・・

「もう時は戻ることは出来ないので」と 言われました、

(時は元に戻れないと 誰が決めたのでしょうか・・)

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二日間の作業を終え あらゆる家財をご自宅から片付けて、

家の中には お母さんの「時の思い出」の「物達」は

すべて消えて無くなりました。


(私は家財や物が無くなった室内の最終確認の為に写真撮影をして、

玄関から庭先に出た)


鍵を閉め表に出た時、少し胸騒ぎがした・・それが なにか わからなかったが、


30分後 作業を完了したことを女性の方に電話をいたしました、

すると女性の方は 母親が30分ほど前に亡くなられたと伝えてくれました。





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